「あの子の兄として、礼を言う。
あの子に笑う場所を作ってくれてありがとう。
あの子の存在を認めてくれてありがとう。
俺が与えられなかったものを、君たちが与えてくれた。




「それは違う。」





大輝くんを見る





「あいつは、俺たちみたいな不良の集まりに、"私にもみんなを守らせて"と言った。
あいつはたまに懐かしむような瞳をしていた。


俺たちの過去を聞いて泣き出しそうな顔をしたと思えば、我慢して"大丈夫だよ"と笑って言う。


あいつは……クロは、きっとあんたを真似してたんだと思う。


ずっと自分を守ってくれたあんたに感謝してたんだろ。


そういう生き方みてぇなのは、あんたがクロに与えたもんなんじゃねぇのか?」





その言葉を聞いて、驚いた



俺が与えられたものがあった……?



あの子は、俺を真似してくれた……?



なぜだか、その言葉で何かが軽くなったような気がした





「……ありがとう。」



「それにしても、なんでクロちゃんは僕たちのところからいなくなっちゃったの〜?」



「それはそこの子がもう突き止めてるんじゃないのかな。
俺と同レベの情報収集力。
弟子にでもなってほしいくらいだけどね。
君でしょ、クロを俺のところに招いたのは。」





そう奏が言ったのは、翔という大人びた子





「俺はお嬢さんとある約束をしていました。
誰にも言わないという条件で、お嬢さんが困った時に助けになると。
お嬢さんはちゃんと約束を守ってくれた。
お嬢さんがああいう行動に出ることも分かっていた。
なので、俺としても独断で色々調べてみたんだ。」





翔くんは今の研究所の場所、研究員の数まで把握していた



確かにこれは奏の跡を継げるな





「大輝の話からお嬢さんがNo.3に会って記憶を取り戻したこと、昴の話も含めて1つ浮かんだことがある。
お嬢さんは、自分の力が及ぼす未来や、俺たちに被害が及ぶことを恐れて、自らの意思で研究所に戻ったのでは、と。」



「まぁほとんどそうだね。
クロは最後の最後まで君たちを守ろうとしているんだよ。
でもクロの必死な行動を、俺たちはこれから裏切らなきゃいけない。




それでも……君たちは来る?」




「当たり前だ。
クロが俺たちを守ろうとするのなら、俺たちだってクロを守るために動くだけだ。」





そう大輝くんが言うと、下っ端くんたちの歓声が響いた



クロだけじゃなく、REDMOONも成長したんだな








「ならば行こうか。
最後の戦いへ。」