その時、ふと気づいた



これが、俺の中に植え付けられた力なんだと



よく分からない流れみたいのが俺の中を駆けずり回って、どんどん速くなる



痛いけど……熱いけど……そんなのどうだっていい



それよりも守らなきゃならないものが俺にはある





「やめろ!!
まだ自分で制御出来ないだろう!?
これ以上やるとお前まで飲み込まれるぞ!!」





何をいまさら



そもそもこれを植え付けたのはお前だろう!!





「あぁぁぁぁあっ!!!!」





何が起きたか分からなかった



大きく地面が揺れた



そしてその振動はだんだん強くなり、壁や床にヒビが入った





「まずい、このままだと崩れるぞ!!」





研究員たちが逃げ惑うなか、あいつだけはこちらをじっと見つめていた



あいつだけは生かしておけない……



でも、クロを助けないと



俺は悲鳴をあげる身体を引きずって部屋に向かった



クロは……震えていた



大きく目を見開いて、身体を縮こませて





「クロ……」



「……シロ……兄……?」





虚ろな目で俺を見るクロ





「行こう……。ここから逃げるんだ。」



「……もう、1人は嫌だ……っ。
暗くて寂しくて、誰もいない……。」





ごめんな



もっと俺がしっかりしていれば、こんなことに巻き込まなくて良かったのに





「大丈夫。
ずっと俺がそばにいるから。」





俺はクロの手をとって、崩れかけた障害物を避けながら外に出た



俺たちはこれから知らなければならない



俺たちがどういう存在なのか



蝶とはなにか



俺たちは……もう人を超えてしまった



この外の世界で、俺たちが安心して暮らせる場所はあるのだろうか



でも、絶対クロだけは守ってみせる