「……これ……、」
「お前たちがここを出てから新しい蝶を作ろうとしたのだが、なかなか適合するやつがいなくてな。」
液体で満たされたたくさんのカプセル
そこで眠る子供たち
「……この子たちはどこから……?」
「ほとんどが施設から買った。」
こんなにたくさんの子供たちを……
「こんな実験繰り返しても意味がない。」
「なぜ?」
「新しい蝶を作ってどうするんですか?」
「伝説を蘇らせるんだ。
ただの物語で終わるのではなくな。」
「それに何の意味がありますか!?
その伝説を蘇らせるのにどれだけの犠牲が出ましたか!?
私達だけならまだ良かった。
それを……あの人たちやこんな小さな子供たちまで……っ。」
「お前はこの世界をまだ知らないだけだ。
犯罪はそこらじゅうにあり、それに怯えながら暮らしている人がいる。
あの伝説なら、誰もが幸せに暮らせる。
蝶の力で世界を統率出来る。」
そんなことしてもうまくいかない
この世界は、私たちのような人形ばかりじゃない
喜びや悲しみを共有し合って、お互いに支えあって生きている
私は外の世界でそれを知った
あの人たちに出会って、短くてもたくさんのものを共有してもらったからこそ
私はこの気持ちを失いたくはない
だから伝説に抗おうとした
「私は明彦さんに逆らうつもりはありません。
でも、これだけは覚えておいてください。
きっと明彦さんの思い通りにはいかない。
明彦さんの知らない感情が、それを阻むから。」
「それは見ものだな。」
ごめんね
きっと、あなたたちも助けてみせるから