あれから1ヶ月が経った
私は今、白で統一された部屋の中にいる
届かないほど高いところにある窓からは、今日もあの日と変わらない空が見えた
これがあの人のやり方
ここから逃げ出した私に対する優しい罰し方
「……私もついに頭がおかしくなったかな。」
優しいなんて思ってしまうのは
そもそもあの日々を思い出したはずなのに、それを恨みもせずに、またこうしてここに戻ってきた
それはきっと……
「調子はどうだ?」
この人に同情と哀れみを抱いているからかもしれない
感情を持った今の私だからこそ
「今日もいつもと変わりませんよ、明彦さん。」
「お前は今日も部屋に閉じこもったままなのか?」
「明彦さんがそうしたんじゃないですか。」
「俺はお前が逃げるんじゃないかと予想したんだがな。
あまりに素直で驚いた。」
「だって自分から戻ってきたのに逃げるわけないじゃないですか。」
「そうだな。
今日からこの施設内なら自由にしていい。」
「本当に明彦さんは変わりませんね。
優しくて、慈悲がある。
普通はモルモットを出歩かせる施設なんてありませんよ。」
「お前たちは俺の子供みたいなものだからな。
あまり道具のように扱いたくはないんだ。」
明彦さんは、私たちの力を生み出した創造主だ
凜が過去を話してくれた時は気づかなかったけれど、No.4という呼び名に明彦さんという名前
それだけで凜が昔ここにいたことが分かる
「明彦さん。No.4は覚えていますか?」
「あぁ、覚えている。
あの子にはお前の力を移植してみたのだが、なかなか変化が出なくてな。
それに、あの子は1人の友人に執着してしまった。
だから解放した。」
「その時に取引をした男の子は……どうなったんですか?」
凜は死んだと言っていた
だけど、この人が殺せと命じるとは思えない
「あの子は……今でも生きている。」
そうなんだ……
新が死んでないというだけで凜と悠は報われる
「仕事の時間だ。」
「私もついていっていいですか?」
「……いずれお前にも手伝ってもらうことだ。
予習には良い素材になるだろう。」
私はこの人のやろうとしていることを知らなければならない
なぜ私たちの力を作ったのか
その力で何をしようとしているのか
私が逃げないのはそのためだ
この可哀想な人が傷つかないように壊さなければならない