「お嬢さん……。」
「そういう訳で、私はもうみんなの仲間じゃない。
だからもう近づかないで。
私はあなたたちの敵だから。
あなたたちの甘ったらしい空間にいたら私まで腐っちゃいそうだから。」
そういって背を向けるクロ
俺はどうしたらその背中に手を伸ばせる
どうしたら、お前は俺に寄りかかってくれるんだよ
たった一言
『助けて』って
そうすれば、お前が抱えるもの全てから、俺は俺を捨ててでもお前を助けるのに
その手をとって抱きしめてやれるのに
なぁ、お前はもう何も背負うことなんてねぇんだ
「クロ。」
だから、いつもみたいに笑ってくれ
名前を呼ばれるたびに嬉しそうに傍にきて、
どんな時も俺の心を一瞬で染め上げる
そんなお前に、俺は惹かれた
俺が持っていないものを持っている気がした
俺がその何かを持っていないから、お前はいなくなるのか?
「……さよなら。」
クロは振り返ることなく消えていった
「お前ら、ほんとだせぇよ。」
如月がポツリと呟いた
「なんやと……っ!?」
「やめろ、慧。」
頭に血が上った慧を翔が止める
「そのまんまだろーが。
なんで俺たちが出てきたか分かるか?
なんであいつがこの道を選んだのか分かるか?」
如月は真っ直ぐと俺の瞳を見た
少しの苛立ちと真剣さで
「お前らはあいつが大切だったんじゃなかったのかよ?
俺はあいつを信じることを選んだ。
俺だけじゃなく、Blue skyがあいつを信じた。
なんでか分かるか?
あいつには、俺たちを動かすほどの覚悟があったからだ。
あそこで無理やりにでも引き止められなかったお前に、あいつを追いかける資格なんかねー。」
「……黙ってればごちゃごちゃ……。」
「紫苑。」
如月が言ってることはもっともだ
俺が手を伸ばさなかったことは事実だ
あいつが助けを求めるやつじゃないのは分かっていたのに、俺は……
「とにかく、今のお前らに俺たちの敵を名乗る資格なんかねーってことだ。
じゃあな。」
そう言うと、Blue skyも去っていった
そこには呆然と立ち尽くす下っ端と、バラバラになった俺たちだけが取り残された