「クロって言ったか?
昴から話は聞いた。
俺たち3人のことに巻き込んじまって悪かったな。」
多分この人は涼さん
翔や昴君にとって大切な人
「最近復帰したって聞いたんですけど、もう大丈夫なんですか?」
「あぁ。
随分長いこと眠ってたみたいだけどな。
そのお陰で2人には苦しい思いさせちまって……俺も翔に謝りたいんだけどな。
なかなか会えそうにもなくてな。」
"俺たちは敵同士だから。
昔のようには戻れない。"
翔の言葉が蘇った
「……きっと恥ずかしいんですよ。
涼さんに会うとどんな言葉をかけてあげたらいいのか分からなくなって。
だから、もう少し待っていてあげてくれますか?」
「あの2人の時間に比べれば、俺はいくらだって待ってやるつもりだよ。」
あぁ、この人も優しい人なんだなって思った
「そういや、クロがここに来た理由聞いてなかったな。」
「そのことなんだけど……」
ここまできて言い淀む
果たしてこれを頼んでいいものなのか
幹部たちは私の言葉を待ってくれている
私は、出てきたモヤモヤを振り払って言葉を放った
「……私がREDMOONを裏切る手伝いをしてほしいの。」
少しの間誰も喋らなかった
でもそれを断ち切ったのはやっぱり拓斗だった
「どうして?
お前はあそこを大事にしてたんじゃねーのか?
信じてたんだろ?あいつらのこと。」
「うん。今でも信じてる。
そしてきっと……裏切ったあとでも、私は未練がましくみんなを信じてると思う。」
「なら余計に分からねーな。
お前が裏切ることに何の意味があんだよ。」
「私があそこから消えることでみんなを守れる。」
「守る?なにから?」
「それは……言えない。」
幹部たちは考えているようだった
それもそうだ
急にきた敵チームの姫に、あそこを裏切るからその手伝いをしてくれと言われて考えないわけがない
迂闊に手を出せば余計に仲を悪くすることになる
それで抗争にまで発展したらただのとばっちりだ