でもそれから変わった



隣を向けば大輝がいて、凛と慧が騒いで、それで紫苑が起きちゃって、最終的には翔が間に入って丸く収まる



本当に子供だったなぁ



屋上を開けると冬の風が肌に染みた



ここで自己紹介したっけ



いつもここでお昼ご飯を食べた



学園祭の時、初めて大輝たちに声を荒らげたのもここ



他にもたくさんの場所を見て回った



どれもみんなとの思い出が詰まってる場所だった





「茜先生。
今までありがとうございました。」



「クロちゃん……本当に行っちゃうの?」



「もう決めたことですから。」





私は今日をもって……この学校を辞める



もう来ることない学校にいつまでも在籍してるわけにもいかないしね





「そう……。
私はクロちゃんが決めたことに何か言う権利なんてないし、麓絽もそれを分かっていたけれど……でも私はあなたの先生だったから、これだけは言わせてね?
クロちゃんの代わりなんていないんだからね?
あの子たちにも、私や麓絽にも。」





その言葉の意味もちゃんと理解していた



だからこそ私は





「……本当にお世話になりました。」





感謝の言葉を伝えるしかなかった



職員室を出ると、麻里が立っていた





「あ、あの……クロちゃん。」



「麻里、どうして?」



「今日、委員会の集まりがあって……。」



「もしかして、聞こえてた?」



「クロちゃん、学校辞めちゃうの……?」



「……うん。」





麻里は俯いたけれど、顔を上げた時にはしっかりと私を見てくれて





「私、クロちゃんとずっと友達だよ!?
離れててもクロちゃんは1人じゃないよ!!」





瞳いっぱいに涙を溜めて、それでも私を見て伝えてくれた



それが本当に嬉しくて





「私も麻里に出会えて、友達になれて良かった。
もっと早く友達になってれば良かったね……。」





ごめん麻里



本当はね、友達を作るのが怖かったの



こうやっていなくなる日を想像する度に怖くなった



だけどあの時、震えながらもはっきりと麻里が「友達になりたい」って言ってくれた



短い間だったけれど、友達が出来て女子らしい会話もして、全部が新鮮だった





「本当にありがとう。元気でね。」





最後は笑って立ち去った



次に彼女に会う時があったら……



その時は私からもう1度お願いしよう