じんじんと冷える指先に、はぁっと息をかけると、白い息が丸く広がり消えていった。



夏ならまだ明るいはずだった午後五時。


冬の外は、もう暗くて、とても寒い。



霜でうっすらと白みがかったコンクリートの上を、しゃりしゃりと音をたてて進んでいく。



駅の近くのスーパーまであと少し。


首に巻いたマフラーに顎を沈めて、少し歩幅を大きくした。



目的のスーパーまで来て、ウイーンと自動ドアが開くと、温かい空気がぶわっと身体を包み込んだ。



早足に中に入って、お母さんから預かった夕飯の食材メモを、ポケットから取り出した。



にんじんと、ネギと、鶏肉と、白菜。

確認しながら籠を取り、一つずつ入れていく。



この材料は、きっと、なべだなぁ。


そんなことを考えながら、最後の白菜を籠に入れると、トンと肩に重みを感じた。



「雫!」



真後ろから聞こえた、聞き覚えのある声。



振り向くと、予想通りの人物が、内巻きの髪を揺らして、顔を覗き込んだ。



「まさかこんな所で会えると思わなかった! 住所もわかんないし番号も知らないし、連絡とれなくて悩んでたんだよねー」



そう言って笑う倖子ちゃんに、少し気持ちが高揚する。



冬休みに入ってから、三日間。


誰にも会うことはなく、誰にも連絡をとることもなく、過ぎていった。



それは、去年までの冬休みなら、当たり前のことで。



クラスの人たちは、みんな誰かと遊んだりしているのかなぁ、なんて、羨ましく思ったりはしたけれど、寂しいと思うことはなかったのに。



今年は違った。



体育祭でのムカデ競争。
打ち上げの焼肉屋。
テスト前の図書室の勉強。



楽しかったことがいっぱいあって、その時間を一緒に過ごした人がいて。

それを思い出しては、会いたいなぁって寂しく思った。



本当は、冬休みに入る前に、電話番号訊きたいなぁって思ったけれど、図々しいような気がして訊けなかった。



だから、倖子ちゃんにこうやって会えて、その上、倖子ちゃんも、私に会いたいと思ってくれていたことが、すごく嬉しい。