一瞬、呼吸ができなくなったような錯覚に陥った。



“好き”って、なんだろう。



颯見くんのこと、好きか、嫌いかって訊かれたら、もちろん間違いなく、好きって答える。



颯見くんのことは、すごく尊敬しているし、憧れてもいる。



だけど、倖子ちゃんの言っている“好き”は、そういうことじゃないんだってことは、なんとなくわかった。



それは、きっと、女子が男子に、また逆に、男子が女子に、向ける気持ち。


“恋愛”とか“恋”とか、そういうものの感情を言ってるんだと思う。



私は、颯見くんのことを、そういう意味で、好き?



“好き”って、どういう風だったら、“好き”なのかな。



尊敬しているのは、“好き”っていうこと?

憧れているのは、“好き”?



だけど、それは、鈴葉ちゃんに対しても、同じように尊敬しているし憧れている。



“好き”ってどういうことなんだろう。



「あ、雫、好きじゃないなら、ほんとなんか……勘違いしてごめん」



何も答えない私に、そう謝る倖子ちゃん。



「なんとなく、体育祭の時から、そうなのかなーって思ったりしてさ」



そんな前から、倖子ちゃんは、そういう風に感じていたんだ。



だとしたら、本当に、そうなのかなぁ。



でも。

わからない。





「えっと……どうなのか、わからない」



私が答えると、倖子ちゃんは一瞬、目を見開いた。


そして、フッと笑う。



「そっか。まぁそのうちわかる時が来ると思うよ」



満足げに言って、倖子ちゃんはシャーペンを持ち直し、問題を解き始めた。






その日以来、鈴葉ちゃんたちが放課後図書室に来ることはなくて、少し安心した。



一週間、倖子ちゃんと放課後の勉強を続け、期末テスト。



結果は、私も倖子ちゃんも、いつもより点数が良く、先生にも褒められた。



そうしてテストが終わると、あっという間だった二学期が終わり、冬休みになった。