「雫?」



近くから囁き声が聞こえて、ハッと、下に向けていた顔を上げた。



「大丈夫?」



身を乗り出すようにして、倖子ちゃんが心配してくれている。



「あ、うん」



頷いて返事をしてみたけど、倖子ちゃんは、そう、と浮かない顔のまま、私を見据えた。



「あの、さ……雫、」



珍しく歯切れの悪いテンポで、倖子ちゃんが声にならない息の声を吐く。



「違ってたら、失礼、なのかもしれないけど、」



一瞬の間を置いて、倖子ちゃんは、はぁっと息を吐き、私の耳に顔を近づけた。









「雫って、颯見のこと……好きなの?」








私にしか聞こえないそれが耳に届いた瞬間、ぐら、と心臓が大きく揺れた。