――――……



目を開けると、白いタイル張りの天井が視界に広がっていた。



結局、私は倒れてしまったんだ。



何度か同じように貧血で倒れたことがある私は、この保健室の天井もお馴染みになっている。



また、迷惑をかけてしまった。


今回も派部先生が保健室まで運んでくれたのかな。

後で、またお礼と謝罪の手紙を書こう。



ベッドから重い身体を起こすと、グラリと脳が揺れた。



ベッド周りに閉じられたカーテンの端を、そっと掴む。



このカーテンを開けたら。
保健の先生に、ちゃんと「すみませんでした、ありがとうございました」って言おう。


今日こそ間違いなく、謝罪とお礼の言葉を言うんだ。



カーテンを掴む手に汗がじわりと滲みでる。


ゆっくりと息を吐いて吸って、鼓動を落ち着かせる。



大丈夫、今ならいける。



クリーム色のカーテンをシャッと勢いよく開けた。









「あ! 起きたんだ」






吐き出そうとした言葉は、喉の奥へ引っ込んでしまった。



保健の先生の、少しふくよかな白衣姿があるはずだった。
そう思い込んでいた。



でもそこにいるのは、一人の男子。

スタイル良く制服を着た、綺麗な顔立ちの、知らない男子。



緊張して、鼓動が音を立てた。



「俺、一年の数少ない男子保健委員だからさ、連れてきたんだけど、」



ふんわりした黒髪に手を当てて、整った顔が半分隠れる。



でもすぐに当てていた手を離して、次の瞬間。


春のような風が爽やかに肌をかすめた気がした。





「あー、まじで、目さめてよかったぁ……」




くしゃっと笑ったその顔が、眩しいぐらい無邪気で、偽りがなくて。



すごく。何とも言えないぐらい、いいな、って思った。