教室の窓際の一番後ろの席に座り、クラスを一通り眺めてみた。



みんな誰かと楽しそうに話していて、教室はいつもより少しだけ賑やか。



夏休みにあったことや、二学期からのことを話してるのかな。

恋の話や噂話なんかもしてるのかな。


楽しそうだなぁ……。



いつかはあの中に私も――。



そんな妄想をしながら、賑やかなクラスメートたちを眺めていると、チャイムが鳴って担任の先生が入ってきた。



賑やかな話し声が、ガタガタと慌ただしく座る音に変わる。



担任の派部(はべ)先生は、少しだけ教壇で話をした後、廊下に整列するよう号令を出した。



男子は出席番号順、女子はその逆で並んで、男女を混ぜ合わせて作られた不思議な列。


一学期の始め、クラス委員長が「男女交互にしようぜ!」と提案して作った並び順。



私の場所は左側の後ろから二番目。



本来の出席番号順なら一番前だったんだろうな、とクラス委員長に少し感謝しながらそこへ並ぶ。



進み出した列。前の男子に続いて歩く。



渡り廊下に出ると、真夏のような太陽に照りつけられて少し気分が悪くなった。



体育館に着くと、蒸された空気がムンッと鼻に入って、さらに体が重くなる。



それに耐えながら、やっと始業式が始まって、校長先生が舞台に立った。



校長先生の話は、高校生の友情や青春の話が多い。


立ったまま聞かなくちゃいけないのは少ししんどいけれど、私はいつも「そんな風になれたらいいな」って妄想しながら聞いている。



「二学期というのは、そんなクラスの仲間と励ましあって――」



校長先生の声がモワモワとした体育館を覆う。



いつもは楽しく聞いていた校長先生の話。



なのに、だんだんとその声が遠くなっていく。



――おかしい。



気分が、悪い。



目の前がチリチリと色を失っていく。



ああ、これは――。



滲み出た冷や汗がじわりと背中を伝った。





こんな状況は初めてじゃない。


貧血だ。






早く、先生に言わないと。

こんな場所で倒れてしまったら、みんなに迷惑をかけてしまう。



そう思うのに、先生に言いに行こうと思うと、緊張して勇気が出ない。



どうしよう。どうしよう……。










「哀咲さん……?」



異変に気付いたらしい後ろの男子が私の名前を呼んだのを最後に聞いて。


視界が光を失った。