「あ、の、」



吐き出した声が、震える。



だけど、この夢みたいな現実が溶けて無くなってしまわないうちに、言いたい。




「私、も、颯見くんが、好き」




浅く息を吸うと、夏の夜の生暖かな空気が肺に流れ込んできた。



少し、足が震える。



体がフワフワして、現実なのか、夢なのか、わからなくなりそう。




「真内のことは、もう好きじゃないの?」



少しだけ低めの声で、そんなことを聞かれて、え、と声が漏れた。



颯見くんの言葉を頭の中で、反復する。



もう好きじゃない、って何だろう。


颯見くんも、私が真内くんを好きだと思っていたのかな。



颯見くんにそう誤解されるのは、鈴葉ちゃんやクラスの人に誤解されるよりも、もっとすごく嫌で、内臓の奥が騒ついた。



「違う!」



出した声は思ったよりも空に響いて、自分でも肩を揺らしてしまった。



灯りがないせいで、颯見くんの表情はよく見えないけど、たぶん目を見開いて私を見てる気がする。



まだざわざわと急かすように騒ぐお腹の奥を、ふー、と息を吐いて、落ち着かせた。