ドクドクと動悸が激しくなる。



息があがってきて、苦しくなる。



でも、ちゃんと言わないと。


誤解を解かないと。



勝手に小刻みに震える手を、激しく動く心臓に当てて、ゆっくりと息を吸った。



「違、いま、す」



自分の言葉が出た瞬間に、花火を持つ手も、胸を押さえる手も、震えが止まらなくなった。



だけど、もう一度深呼吸をして、手に力を込める。



「付き合って、ない」



もうとっくに役目を終えた花火が、手と一緒に震えている。



鼓動の音が耳をつんざいて、浅い息を無理やり吸った。



「颯見くん、が、好きっ、だから」



出した声は、少しだけざわついた空気に響いて溶けた。







ザザーン、とまた波の音が風を誘う。



パチパチと、誰かの線香花火が音を立てて光って落ちた。




まだ、体が震えてる。







「あ、」




誰かが声を漏らしたのと同時に、ズザ、と背後で砂を踏む音がした。