「私、嵐に怒られたんだ」



スプーンを紅茶の中で回しながら、鈴葉は続ける。



「私が身勝手な行動してたのを、怒られたの」



そう言って、スプーンをカップの外に置いて、ふにゃっと笑った。



“身勝手な行動”の中身は、敢えて触れない方が良い気がして、へぇ、とだけ返事する。



「私が悪いのに、その時ムキになって言い返したりしちゃって」



怒られても、酷いことを言われても、自分の非はすぐ認めて謝る鈴葉が、ムキになるなんて珍しい。



そこにはたぶん、何か他の感情が絡んでいたんだろうなと推測する。



眉を下げて笑う鈴葉に「そっか」と返して紅茶をすすった。



俯きがちに頷いた鈴葉を見て、こんなしおらしい鈴葉は貴重だなぁ、なんて思う。



「まだ謝ってないのか?」



聞くと、鈴葉は「ううん」と首を振った。



「じゃあなんでまだ気まずいままなの?」


「それは……」



言葉を詰まらせた鈴葉。




あぁ、これは。



第六感的な何かが、その言葉の続きを読んだ。



鈴葉が嵐に、または嵐が鈴葉に抱いた、恋愛感情が関係している。



きっと何かがこじれている。