「てか嵐、俺のシャーペン、当たり前のように使うなよ」



朝羽くんが言うと、颯見くんは、ははっと笑った。



「なんだよ、今さら。いつものことじゃん」


「あのなー、このシャーペンは鈴葉がくれたものだから大切なんだよ」



そう言ってスッとシャーペンを颯見くんの手から抜き取った朝羽くんを見ながら、ひとつ頭に疑問が浮かんだ。



今、朝羽くん、“鈴葉”って言った。

私の知ってる、あの鈴葉ちゃんのことなのかな。

名前で呼ぶほど仲が良いのかな。颯見くんとも仲が良いみたいだけど、朝羽くんって……。



「あ、ちなみに、俺とカズは、家が近所で幼馴染なんだ」



私が不思議そうな顔をしていたのかもしれない。

颯見くんが、私の心を読み取ったかのように、説明してくれた。



な、カズ、と朝羽くんにふる颯見くんを見て、やっと何かが繋がった。



“カズ”って、朝羽くんのことだったんだ。



朝羽くんのフルネームを思い出してみる。


確か、朝羽和仁(あさばかずひと)。


そうだ。和仁だから、カズなんだ。



鈴葉ちゃんから何度も聞いていた“カズ”が、朝羽くんだと知って、少し不思議な気分になる。



「そうだよ。俺と嵐と、あと中雅鈴葉っていうのがいるんだけど、そいつも幼馴染なんだ」



朝羽くんは、フッと頬を緩めて笑った。



「鈴葉は人懐こいし誰にでも優しいから、哀咲さんも話しやすいと思うよ」



朝羽くんに柔らかな笑顔を向けられる。



私が本当は、鈴葉ちゃんと何度も話したことがあるなんて、朝羽くんも颯見くんもきっと知らない。



「今度、鈴葉に会わせてあげるよ」



そう言ってくれた朝羽くんに、何て返そうかと戸惑った。


ちゃんと、何度か話したことがありますって言うべきなのかな。



そう思ったとき、颯見くんが、ははっと笑いを吹き出した。



「カズは鈴葉のこと褒めすぎだって。人懐こいっていうより、単純で、おせっかいな――」



颯見くんがそこまで言いかけて、はっと止めた。



あちゃー、と苦く笑った颯見くんの視線の先を辿ると、いつからいたのか、腕を組んだ鈴葉ちゃんが立っていた。