また、一人になってしまって、少しさみしさが残る。



鈴葉ちゃんは、店長さんや黒田のおじさんと呼ばれる人と親しく言葉を交わして、置いてある雑誌を綺麗に並べている。



それを眺めながら、鈴葉ちゃんも朝羽くんや颯見くんと幼馴染みなんだなぁ、なんて。


もうすでに知っていることなのに、なんだか今更じわじわと実感してくる。



「倉庫の補充、終わったよー」



ガチャ、と、カウンターの奥の扉が開いて、そこから颯見くんの姿が現れた。



トクン、と胸が音を鳴らす。



けど、次の瞬間には、それは小さく刺さるような痛みに変わった。



颯見くんが、鈴葉ちゃんの隣に並んで、「手伝うよ」と言って、くしゃりと笑う。



そこに見えたのは、私には入り込めない世界。私が知らない世界。



「二人とも働き者だねー。鈴葉ちゃんは、やっぱり将来嵐くんのお嫁さんになるのかなー」


「いやいや黒田さん、鈴葉ちゃんは、うちの和仁の嫁に来てもらいたいねー」


「もー黒田のおじさん、店長、私達はそういうのじゃないってば」


「だいたい俺なんかじゃ鈴葉の旦那は務まらねーよ。もっとお子様の扱いが得意な人じゃなきゃ」


「ちょっと嵐。それどういう意味?」



私の知らない世界を過ごしている。


それを思い知らされたような気がして。


思わず、視線を二人から逸らした。



噂で、颯見くんは、鈴葉ちゃんが好きだって、よくみんなが言っていた。



やっぱり、そうなのかな。



心臓が、わしづかみされたみたいに、苦しい。



目を逸らしていても、聞こえてくる。


店長さんらしき人とおじさんの会話や、コップを置く音、雑誌を動かす音に混じって、鈴葉ちゃんと颯見くんの、楽しげな会話。