「ってか、ここ暑い!」



彼は、椅子からサッと立ち上がって保健室の窓に向かって歩いた。



私もベッドから下りて、立ち上がって窓の方を見る。

窓は、全部閉まっていた。



爽やかな風が吹いたのは、やっぱり気のせいだったんだ。



彼が、ガラガラと窓を開けると、少しだけ彼の髪が揺れた気がした。



「どう? 少しは良くなった?」



彼は、窓の枠に片手をかけて振り返った。



少し、涼しくなったのかな。
涼しくなったような気もする。


もともと、ここがそんなに暑いとも思っていなかったから、空気が良くなったのかどうかもよくわからなくて、頷くべきか迷う。



考えていると、彼がゆっくりと、私の方に足を進めた。



なんだか、近づいてくる距離に、緊張が増していく。



「やっぱりまだ、気分悪い?」



その距離、1メートルほど。



彼が心配そうに言って、足を止めた。



安心したのとともに、ハッとする。


もしかして、体調のことをきかれていたのかな。

それなのに、私が何も答えないから、心配をかけてしまったんだ。



どうしよう。

ううん、どうしよう、じゃなくて、ちゃんと言わなきゃ。



そう思うと、胸がドクドクと激しく音をたて始めた。



じんわりと手に汗がにじむ。



でも、言わなきゃ。
ちゃんと言葉で、言わなきゃ。



少し、脚が震えてるかもしれない。



鼓動を速める胸に、思わず手を当てた。