「哀咲、緊張してる?」



また優しい声が降ってきて、トクンと胸の音を聞きながら、そっと顔を上げた。



私は今、どんな顔をしているんだろう。


颯見くんの目に、私はどんな風に見えているんだろう。



かわいいって少しでも思ってくれていたら、嬉しい。



そう思ってすぐ、ハッと、自分の心の声に、なんて厚かましいことを思ってしまったのかと、責めた。



「朝羽、ちょっとトイレ借りたいんだけど、案内してよ」



何を思ってか、倖子ちゃんが突然、そう言って立ち上がった。



「え、あ、うん……」



戸惑う朝羽くんを連れて、去り際に、まるで頑張ってとでも言うようにポンポンと肩を叩かれた。



倖子ちゃんを見届けると、目の前には颯見くん。


この空間に、二人だけになってしまった。



また緊張が脈を速くする。



ドクドクと、鼓動だけが耳に響いて、うるさい。



沈黙の時間が、妙に緊張を大きくしていて、何か言葉を発さないと、と心が急くけれど、出てくるのは吐息だけ。



何も話さずにいる私は、颯見くんの目に、おかしく映ってるんだろうか。


そんな風には、見てほしくないのに。



何か話そうと思えば思うほど、鼓動が速くなって、握りしめた拳まで震えてきて、声が出ない。