――――……
メイクも着替えも終わり、倖子ちゃんと昼ご飯を食べて、少しお喋りをしてから家を出た。
外はやっぱり寒い。
今から向かうカフェ――朝羽くんの家は、駅の反対側にあるらしくて、三十分近く歩いて行った。
「あーやっと着いた」
少し気怠そうに言った倖子ちゃんの視線の先を辿ると、茶色い壁のこじんまりとしたお店があった。
横に立てかけられている看板には『あさばカフェ』と書かれている。
「ちょー寒いし、ちょー足疲れたし、もう早く入ろ」
スタスタと先に行く倖子ちゃんに、小走りで後に続く。
倖子ちゃんがドアを開けると、チリンチリンとドアにくくり付けられている鈴が音を鳴らした。
それを合図に、いらっしゃいませーと出迎えの声。
ここに、颯見くんがいるんだ。
そう思うと、急に緊張して手に汗がにじんだ気がする。
中に入ると、空気が温かくて、思わず身震いをした。
「どうぞ空いてる席に……あれ?」
戸惑う聞き覚えのある声が聞こえて、その声の主に視線を移した。
「哀咲さんと、寺泉さん……だよね?」
朝羽くんが、目を大きくしながら、「どうぞ、こっち」と席へ案内してくれた。
そっかぁ。
颯見くんが部活が休みということは、同じサッカー部の朝羽くんも休みなんだ。
そんな当たり前のことに今さら納得しながら、俯きがちにちらちらと周りを見渡してみる。
お客さんは、私と倖子ちゃんと、カウンターにおじさんが一人だけ。
カウンターに座るおじさんは、「店長」と呼ばれる人と親しげに話している。
働いているのは、朝羽くんと、店長さんらしき人しかいない。
颯見くん、いないのかな。
そう思うと、緊張して速まっていた鼓動が落ち着くとともに、気分もなんだか沈んでいく。
「ここまで来て、あいついないとかマジ勘弁」
倖子ちゃんは気だるげな息を吐いて、「ちょっと朝羽!」と朝羽くんを呼んだ。
朝羽くんが戸惑ったような足取りで、近づいてくる。
それを俯きがちに感じていると、タンタンタンと別の軽快な足音が奥から聞こえてきた。
メイクも着替えも終わり、倖子ちゃんと昼ご飯を食べて、少しお喋りをしてから家を出た。
外はやっぱり寒い。
今から向かうカフェ――朝羽くんの家は、駅の反対側にあるらしくて、三十分近く歩いて行った。
「あーやっと着いた」
少し気怠そうに言った倖子ちゃんの視線の先を辿ると、茶色い壁のこじんまりとしたお店があった。
横に立てかけられている看板には『あさばカフェ』と書かれている。
「ちょー寒いし、ちょー足疲れたし、もう早く入ろ」
スタスタと先に行く倖子ちゃんに、小走りで後に続く。
倖子ちゃんがドアを開けると、チリンチリンとドアにくくり付けられている鈴が音を鳴らした。
それを合図に、いらっしゃいませーと出迎えの声。
ここに、颯見くんがいるんだ。
そう思うと、急に緊張して手に汗がにじんだ気がする。
中に入ると、空気が温かくて、思わず身震いをした。
「どうぞ空いてる席に……あれ?」
戸惑う聞き覚えのある声が聞こえて、その声の主に視線を移した。
「哀咲さんと、寺泉さん……だよね?」
朝羽くんが、目を大きくしながら、「どうぞ、こっち」と席へ案内してくれた。
そっかぁ。
颯見くんが部活が休みということは、同じサッカー部の朝羽くんも休みなんだ。
そんな当たり前のことに今さら納得しながら、俯きがちにちらちらと周りを見渡してみる。
お客さんは、私と倖子ちゃんと、カウンターにおじさんが一人だけ。
カウンターに座るおじさんは、「店長」と呼ばれる人と親しげに話している。
働いているのは、朝羽くんと、店長さんらしき人しかいない。
颯見くん、いないのかな。
そう思うと、緊張して速まっていた鼓動が落ち着くとともに、気分もなんだか沈んでいく。
「ここまで来て、あいついないとかマジ勘弁」
倖子ちゃんは気だるげな息を吐いて、「ちょっと朝羽!」と朝羽くんを呼んだ。
朝羽くんが戸惑ったような足取りで、近づいてくる。
それを俯きがちに感じていると、タンタンタンと別の軽快な足音が奥から聞こえてきた。