それから私は、倖子ちゃんの指示通りに、服を着たり脱いだりの繰り返し。



倖子ちゃんは、んー、と唸りながら、何度も私を着せ替えた。



そうして、最終的に絞られたのは、三パターン。



「これか、これか、これ。もう後は、雫の好みだね」



好み、と言われてしまうと、私も悩んでしまう。



服の好みなんて、ずっと気にせずに生きてきた。


学校は制服があるし、家に帰ったら会う友達もいなかった。



中学のときに通っていた塾では、たったひとり話せる存在の、鈴葉ちゃんに会っていたけれど。

その塾へは、制服のまま通っていたし。



「これは、かわいい系。これは、清楚系。これは、大人系。雫はどうなりたい?」



最後まで倖子ちゃんが決めてくれると思っていたから、そんなことを訊かれるとは思っていなくて、戸惑ってしまう。



私は、どうなりたいんだろう。



「え、と、」



答えを出せなくて、床に並べられた三つの服のあいだで視線を泳がせていると、倖子ちゃんがふっと息を漏らした。




「じゃあさ、雫。雫はどう見られたい? 誰に、どう見られたい?」





誰に、どう。



ふっと浮かんだのは、颯見くんの顔。



颯見くんは、どんな子を、素敵だと思うのかな。


かわいい服を着た子かな。

それとも、清楚な子かな。

大人っぽい服かな。



考えると、胸の奥がなぜか熱くなった。