「よし! やっとマフラー掴まえた!」


「俺たちはマフラーを追跡しに来たんじゃないんだよ? アイツを追跡しに来たんだよ?」


「結局アイツがここに来るかどうかもわからなかったなぁ」


「ごめん、二人とも……」



彼女たちの会話は、よくわからない。


でも、マフラーが手元に戻ってよかったなぁと、遠巻きに見ながら安心した。



「あーあ、ギンに怒られるかなぁ」


「……だろうね」


「……うん」



三人ため息をついて、駅の方へと行ってしまった。



三人並ぶその背中を見ながら、やっぱりどこかで見たことがある、と記憶を探る。



だけど、思い出そうとしても全く正解にたどりつけない。


誰かに似ているだけなのかな。


そんなことを思ったけれど、似ている人物も全く思い浮かばなかった。








「雫!」



すぐ横から、声が聞こえて、勢いよく顔を向ける。



予想通り、そこにいたのは倖子ちゃんで、なんだか大きな鞄を二つもぶら下げながら、「私の方が早いと思ったのに」と笑った。



腕時計をちらりと見てみると、九時五十分。あの三人の姿を目で追っている間に、もうそんなに時間が過ぎていたのかと、少し驚いた。



「寒いし、行こっか」


「うん」



道中、倖子ちゃんの荷物があまりにも重そうだったから、思い切って「私も一つ持つ」と言うと、倖子ちゃんは嬉しそうに笑った。