翌日。



随分と早く、待ち合わせ場所に来てしまった。



腕時計に目をやると、九時半を少し過ぎたぐらい。



スーパーは十時から営業のようで、人は、二、三人通り過ぎる程度しかいない。



こんな早くから待ち合わせ場所に来たって、倖子ちゃんが来るまでは会えないのに。


それでも、そわそわと落ち着かなくて、早くに家を出てきてしまった。



ふともう一度腕時計に視線をやると、まださっきから一分も経っていない。


時間がすごく長く感じる。



そういえば、待ち合わせをするのも初めてだ。


鈴葉ちゃんとは、会えば一緒に話したりしたけれど、会うために待つのは、したことがなかった。



待ち合わせって、こんな感じなんだ。


落ち着かなくて、少し緊張もして、時間が早く過ぎてほしいのに、とてつもなく長く感じる。



ぴゅーっと冷たい風が肌を叩きつけてきて、思わずマフラーに顔を半分埋めた。



服装は、後で倖子ちゃんと決めるから、と適当にセーターにジーパン。


寒さの対策のために、コートにマフラー、手袋と、腹巻もしてるけど、これでよかったのかなぁ。



少し不安になりながら、手袋をはめた手を、コートの袖にひっこめた。



また、ぴゅーっと冷たい風が吹き抜けて、腰まであるおさげが頬を叩く。



そんな私の目の前を、真っ白なマフラーが、波乗りのように風に乗って横切って行った。



その直後に、それを追いかける、私と同世代ぐらいの女子。



ふわふわとうさぎのようなボブの髪が、走るリズムに合わせて軽やかに揺れている。



どこかで見たことがあるような気がして、その女子を視線で追った。



「おい、ウタナ!」


「あー、もうだめだ。今回の追跡は諦めよう」



なぜか、植木の裏と壁の隙間から、二人の男子が姿を現し、そう呟いた。



一人の男子は、歩くたび貫禄のある大きな体を揺らしながら、寒そうな坊主頭を片手で掻きむしっている。

もう一人は、ヒョロリと細長い体を寒そうに震わせながら胸の前で腕を組んでいる。



やっぱり私は、この二人もどこかで見たことがあるような気がして、自分の中の記憶を呼び起こしながら、その人たちを眺めた。