夢乃くんに手を引かれて歩くこと10分。

着いたのはとあるタワーマンションの前。20階以上ある建物は見上げても上が見えなくて、どう考えてもお金持ちの人しか住めないような場所だ。


「俺ここに住んでるんだけどさ」

予想はしてたというか、やっぱり夢乃くんと私は次元が違いすぎる。


「アレに困ってるんだよね」

〝アレ〟と指さした先には他校の制服を着た女の子たちが数人。誰かを出待ちするかのようにソワソワと周りを気にしている。


「お友達ですか?」

「いや、全然。名前も知らない子なんだけど……」


いまいち状況が理解できてないけど、都心の中心街でもないこのマンションに芸能人やアイドルが住んでるとは考えにくい。

それなのに女の子たちがマンションの前で待つ理由。

芸能人でもアイドルでもないけど、それに匹敵するぐらいの美貌と人気をもつ人物が隣にひとり。


「まさか夢乃くん待ちですか?」

「うん、そう」

断言できてしまうということは恐らくこうした待ち伏せを何回もされているんだろう。