『ももも、もしもし』

声が上擦ってヘンなイントネーションになってしまった。


『あ、もしもし?』

スピーカー越しの夢乃くんの声はなんだか普段よりも低く感じた。


『いま家?』

『そう、ですけど……』

思えば家族以外の人と電話なんて何年ぶりだろうか。しかもそれが同級生の男の子なんて初めてかもしれない。

さっきまでベッドで横になっていたのに何故か身構えてしまって私は正座になっていた。


『ちょっとさ、駅前まで来てくれない?』

『どうしてですか?』

『ものすごく緊急事態なんだよね』


……き、緊急事態!?

なにそれ、どういうこと?

夢乃くんは『早くきて、お願い』と何度も連呼するから、ただならぬことだと思って私は理由も聞かずにそのまま家を飛び出した。