夜宮華瑠
(よみやはる)
偽名:夜華瑠依
(よばなるい)
容姿端麗
昊洸の恋人
物理担当教師・二十五歳
敬語男子・ゲイ
ある日、昊洸に別れを告げられる
それは華瑠を守るためだと
同僚から後から聞く
不知火昊洸
(しらぬいこう)
国語担当教師・二十七歳・バイ
華瑠の恋人
愛妃桜に華瑠を殺すと脅され
仕方なく婚約する
多々良深影
(たたらみかげ)
家庭科担当教師・三十二歳・ゲイ
ヘアーメイクが得意
華瑠と昊洸の
友人兼理解者兼協力者
何故か裏の人間にも
知り合いが多い
対崎愛妃桜
(ついざきあいら)
財閥のお嬢様・二十七歳
我が儘で甘やかされて育った
昊洸の元彼女
華瑠を殺すと脅し
昊洸を婚約者にする
対崎義治
(ついざきよしはる)
対崎財閥の社長・五十二歳
愛妃桜の父親
娘を甘やかし放題で育ててきた
『華瑠、ごめん、別れてほしい』
それは何の前触れもなく言われました。
週末の何時もと
変わらない彼の家で。
『昊洸、
私のことを嫌いになったのですか?』
私は彼に何か
してしまったのでしょうか?
ここ二週間程、
忙しく会えない日が
続いていたのは確かですが
それくらいで壊れるような
仲ではないと自負しているつもりです。
『そうじゃないんだ……
だけど別れてほしい』
嫌われたわけではないとわかり
そこには安堵しましたが
では何故、別れてほしいなどと
言うのでしょう……
『理由は教えてくださらないのですね』
声に棘があったのは否めません。
『ごめん……』
彼の口からは謝罪だけ。
『私は別れる気は
毛頭ありませんので
保留ということにしておきます』
彼の家を出て帰路につきました。
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彼から別れを告げられてから
三ヶ月経ちました。
そして、その日の朝刊を見て
頭を鈍器で殴られたような
気持ちになりました。
新聞の一面を飾っていたのは
昊洸とある令嬢の婚約発表。
そういうことなら
あの時に言って
くださったらよかったのに……
それとも、この発表まで
口外禁止だったのでしょうか?
それなら、仕方ありませんね。
しかし、この婚約に
昊洸が乗り気ではないと
深影さんが教えてくれました。
彼は何故か裏の人間とも仲が良いのです。
「《華瑠、新聞見たか?》」
朝食をすませ、出勤の準備をしていたら
深影さんから電話が来ました。
『《はい、見ました》』
「《あの記事は信じるな》」
どういうことでしょう?
「《あいつはあの女に
脅されてるんだ
お前の命と引き換えに結婚しろとな》」
はい!?
それこそ、すぐに私に
言うべきではありませんか!?
いえ、それこそ
言えなかったのでしょうね。
私の命が自分のせいで
狙われているなんて……
優しい人ですからね(苦笑)
『《わかりました。
教えて頂いてありがとうございます》』
深影さんにお礼を言って
通話を終わらし
出勤するために家をでました。
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学校に着き、自分の席に座り
隣の席が空席なのを確認し
小さくため息を吐きました。
昊洸が欠席なのは
今朝の朝刊を見た時点で
わかっていたことですけどね。
「華瑠、おはよう」
授業の用意をしようと
机の上に色々と出していたら
深影さんが声をかけてきました。
『おはようございます』
「華瑠、ちょっといいか?」
昊洸のことでしょうね。
『はい、構いませよ』
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授業の用意を持ち
深影さんの後について行くと
着いた場所は家庭科準備室。
「職員室じゃ話せないが
此処なら邪魔かま入らずに話せる」
家庭科準備室は
深影さんしか使ってないですもんね。
「昊洸を奪還する気はあるよな?(ニヤリ)」
当たり前じゃないですか。
『ぇぇ、勿論』
彼は私の恋人ですからね、
返して頂きますよ(ニヤリ)
「そこでだな、
お前に女装してもらおうと思うんだが」
それはいいですね。
私は普段、“綺麗”だの“可愛い”だの
昊洸以外に言われるのは
好きではないのですが
少なくとも例の令嬢よりは
自分の方が綺麗だと思っています。
『婚約発表のパーティーは
今夜でしたよね?』
朝刊には今夜八時から
◆◆ホテルにてと書いてありました。
「そうだ、早めに学校を出て
華瑠のドレスを買いに行かなきゃな。
その後は俺の家でヘアーメイクだな」
予定が決まれば実行するのみです。
放課後、
私達はデパートに来ました。
今夜着る私のドレスを買いに。
深影さんが悩んでいると
店員さんが声をかけてきました。
そして、決まったのは
淡いベビーブルーのドレス。
そして、深影さんの家に着き
ドレスに着替え、
ヘアーメイクをしてくださいました。
「うん、華瑠、綺麗だ」
昊洸以外で“綺麗”だの“可愛い”だの
言われてムカつかないのは
深影さんだけですね。
『ありがとうございます』
時計はまだ午後六時を指しています。
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タクシーを呼び、行き先を告げ
◆◆ホテルに着きました。
さて、パーティー会場は六階ですね。
因みに、深影さんもタキシードを着ています。
昊洸とは違ったイケメンですが
通りすぎ行く女性達が
振り返ってまで深影さんを
見て行きます(笑)
「瑠依、行くぞ」
わざとらしく、私の手を取り
エレベーターへ向かいました。
《瑠依》とは私の偽名です。
《華瑠》のままでは
色々問題がありますからね(苦笑)
『はい』
六階に着き、パーティー会場となっている
広間からはちょうど、二人の紹介が
なされているところのようです。
乗り込むなら今ですよね(ニヤリ)
バンッ‼
少々お行儀が悪いですが
そんなことを気にしている
暇はありません。
「な、なんだね君は」
『夜華瑠依と申します。
あなたの娘さんに
恋人を盗られた哀れな女ですよ(クスッ)』
よく似た親子ですね。
『彼を返して頂こうと
此処まで足を
運んだしだいですよ対崎さん』
「瑠依、一人で行くなよ」
私に追い付いた深影さんが言いました。
『すみません(苦笑)』
謝る気など更々ない
口調で
深影さんに謝罪しました(笑)
『昊洸、帰りましょう』
例の令嬢の横を通りすぎ
昊洸の傍まで行き、手を取りました。
しかし、その場から動こうとしません。
私の命がかかったているからでしょうね。
「瑠依、昊洸を連れて行け」
深影さんの言葉に頷き、
私は昊洸の耳元で一言
“大丈夫です”と伝え
彼を立たせてエレベーターに向かいました。
ホテルの前に止まっている
タクシーに昊洸を押し込み、
私も乗り、行き先を告げました。
着いたのは私の家。
昊洸を玄関に押し付け
ドレス姿のまま
少々背伸びをしてキスをしました。
『華瑠‼ 何で僕を連れ出したんだ‼』
怒ると思ってました。
『大丈夫です』
先程と同じ言葉を呟きました。
深影さんは私達と同じ
教師ですが、
裏の人間とも仲が良いのです。
そして、今回の私の件も
裏の方から聞いたそういうです。
『それより、中に入りましょう』
もう一度、背伸びをして
昊洸にキスしました。
一旦、昊洸から離れて
彼を先に上がらせてから
玄関の鍵を閉めました。
さて、ドレスとタキシードのままというのは
窮屈なので着替えることにしましょう。
それとも、脱いだら
服は着ずに
ソファーでシてしまいましょうか(クスッ)
『昊洸、着替えましょう』
とりあえず、名目として
提案はしてみます。
私が彼の前でドレスを脱ぎ始めると
やっと動き始めました。
『華瑠、着替えるなら
部屋へお行き』
慌てた声をだす昊洸。
わざと此処で脱いでいるのですよ(笑)
『昊洸も脱ぎましょう』
タキシードの釦に手を掛けて
外そうとしたら止められました。
『華瑠、お願いだから
先に着替えて来ておくれ』
その言葉を無視して
昊洸の手をどかして
再び、釦を外しにかかりました。
そして、彼の手を引き
ソファーに押し倒しました。
『華瑠、誘ってるのかい?』
その通りですよ。
『そうですよ』
あまり、乗り気ではありませんね……
三ヶ月も触れることはおろか
学校ですらまともに会えず
会話も出来ずにいたのですから
私から誘うくらいよいではないですか‼
それとも、この三ヶ月で
彼女を抱いて、私なんかでは
満足で出来なくなって
しまったのでしょうか……
『すみません』
私は彼の上から降りました。
『華瑠?』
『あなたはあまり
乗り気ではなさそうですので
今日はやめておきます。
いきなり押し倒してしまって
すみませんでした……』
涙を見られないように
浴室に逃げ込みました。
昊洸が無意識に見えない壁を
私の目の前に置いたような
そんな錯覚に陥りました。
私達はもう戻れないのでしょうか……
あの場所から彼を
連れ戻せば丸く収まると
思っていた私は
甘かったのかも知れません。
昊洸を連れ帰って来た日から
もうすぐ一ヶ月半が経ちますが
やはり、ろくに話ていません。
彼はあの日から
私の家に居ますが
部屋は別々です。
対崎のお嬢様は
昊洸の居場所が判らす
イライラしているみたいです。
そして、
私を殺(や)ろうと
していた計画は
深影さんの知人の方が
阻止してくださったようです。
これで私への
脅威はなくなったわけですが
昊洸は何故私と
話すらしてくれないのでしょう?
やはり、私など
どうでもよく
なってしまったのでしようか……
。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。
「昊洸、どういうつもりだ‼
華瑠も遠慮なんかしてないで
文句の一つでも
言ってやったらどうなんだ?」
深影さんの言ってることは正しいです。
私は昊洸を気遣ってるつもりで
自分が傷付きたくなくて
何も言えずにいたのです。
『昊洸、私に飽きたなら
自分の家でも
あのご令嬢のところでも
好きにあの家を
出て行っていいのですよ』
言ってるそばから
涙が零れてきましたが
構わす言葉を続けました。
四ヶ月半前、昊洸から
別れを告げられた時点で
運命の輪は
回っていたのでしょうね(苦笑)
こうなる運命の……
なんてことが一瞬頭を過りました。
『華瑠、正直に言えば
僕は何回か彼女を抱いた』
あぁ、やはり……
『では、やはり
あのご令嬢のところに
帰られてはどうです?』
別れないと言った時よりも
何十倍も言葉に棘を含ませて
低めの声で言いました。
『最後まで聞いてほしいんだ……
確かにあいつを抱いた
事実は変えられない。
だからこそ、華瑠を
避けるような形になってしまった……
愛がなかったとは言え
華瑠以外の誰かを
抱いてしまった腕で
本当に華瑠を抱いていいのか
わからなかったんだ……ごめん』
だからあの日も……?
「はぁ~
お前達は本当に
手のかかる奴らだな」
深影さんが
呆れた声色でいいました。
「他の奴らには上手く
言っといてやるから
二人とも今日はもう帰れ」
時刻は昼休み。
『いいのですか?』
お互いに
言葉が足りない
私達に呆れて
二人きりにしようと
考えてくださったのでしょうね。
「あぁ、さっさと帰れ」
私達は家庭科準備を出て
職員室に戻り、
帰り支度を始めました。
数人しかいない職員室を出て
職員玄関に向かいました。
。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。
家に着き、
玄関を閉めたところで
あの日のことを
思い出していました。
そう言えば、私からキスをしたのに
昊洸は抱きしめて
くれませんでしたね。
『昊洸、
明け透けに聞きますが
あのご令嬢とは
そのままシましたか?』
多分、いえ確実に
避妊はしていたでしょうね(苦笑)
『いや、避妊したよ。
僕がそのままシたいのは
君だけだから』
予想通りですね(笑)
『ならよかったです。
昊洸、私をまだ
愛してるとおっしゃるなら
思い切り抱きしめてください』
彼の背中に腕を回し
抱きついた私を
痛いくらいに抱きしめてくれました。
よかった。
ちょっと違いますが
これで仲直りですね(苦笑)
『ぁっ、はっ、昊洸……』
私は今、離れていた分を
埋めるように抱かれています。
『華瑠、華瑠』
うわごとのように私の名を
呼びながら律動を繰り返され
何度もイかされ
休む暇もなくまた穿たれるのです。
『昊洸、足りません』
それが嫌なのではありません。
『んっ……
そんなに締められたら
僕はイってしまうよ(苦笑)』
嬉しいのです。
私の躯で昊洸が
満足して
くださっていることが。
『こら華瑠‼』
より一層、締め付けたら
頭上から咎めるような声がしました。
『あなたのを私の中にください』
昊洸を躯の奥で感じたいのです。
『わかったよ』
彼のを中に出されたのを
感じた瞬間、
私もイってしまいました。
『ありがとうございます』
ニッコリ笑うと昊洸も
笑ってくださいました。
私達を離すことは
誰にも出来ないのです。
『昊洸、
愛しています(///ㅅ///)♡』
あのご令嬢は今頃
悔しがっていることでしょう(笑)
昊洸は誰にも渡しません‼
『僕だって
華瑠のことを愛しているよ♡♡』
私達はどんな苦難や厄介事にも
立ち向かっていけると思うのです。
二人でなら乗り越えて
いけると確信があるのです。