「正直、今井さんのことはまだ全然諦められていないけど、彼を、あなたのパパを好きになったのは、他でもない、娘思いの彼に惹かれたから」


「娘…想い…」


「まだ今井さんが移動になる前、たまたま違う部署に用事があって、彼を見かけたの。その時の今井さんったら、嬉しそうに写真を周りの同僚に見せびらかしながら話してて…あの時の笑顔が今でも忘れられない。完全に一目惚れって感じ」


里菜さんはうっとりした表情をしながら、窓ガラスを見つめる。


その横顔はやっぱり綺麗。
こんな綺麗な人が、パパを好きに…。


「世間体をすごく気にする家庭だったからなのか、今井さんのあのあったかい笑顔にすごく心が癒されたっていうか、私に足りなかったのってこれだって思ったの。それまでは新しい家庭とか結婚とか興味なかったんだけどね…だから、つまり何が言いたいかっていうと…」


っ?!


里菜さんは突然私の両手を握ると、こちらをまっすぐ見つめた。