僕は記憶をなくしてしまった。
何度も何度も、自分の記憶の糸を手繰り寄せようとした。
しかし、手繰り寄せようにも、その糸さえ見当たらない。
…僕は誰だ?
頭がズキズキと痛む…。
何かとても懐かしい夢を見ていた気がする。
目が覚めたときには、僕はこのベッドに横になっていた。
体を半身起こして、ベッドの隣の机の上に置いてある、鏡を覗き込み、自分の顔を見てみた。
頭には包帯が巻かれていて、顔のいたる所にバンソウコウが貼ってあった。
黒いボサボサの髪、ひどくやつれた顔、目の下には隈…。
これが…僕?
一体、ここはどこなんだ?
部屋を見渡した。
自分のを含めて、ベッドは2つある。