自分達の足音がやけに大きく聞こえる。
中央の通路の突き当たりには大きな絵があった。
…白い翼の生えた人が、光に向かって手を伸ばしている絵。
絵の正面に立ち止まり、
「これって何の絵?」と僕はジャロに訊いた。
「これは天使よ」
「天使?」
「そう、天使。この世界のどこかの街にひっそりと暮らしてるといわれてるの」とジャロは絵を見上げながら言った。
「…そして時々、善人で、毎日一生懸命生きている人間に、幸せを運びに来るんだって。これは、人間が天使に会いに行く場面の絵よ」
………
「私も…」
ジャロはこっちを向いて、僕に微笑んだ。
「私も一度でいいから、天使に会ってみたいなあ」