「自転車乗れる?」
「どうかな…」と僕は答えた。
ジャロはどこからか自転車を持ってきた。
僕は自転車に乗り、ペダルを踏んだ。
自転車は進む。
…乗れた!
どうやら、体に染み付いた記憶というのは、なかなか消えないらしい。
「乗れるじゃない!…ちょっと止まって!」
そして、ジャロは自転車の荷台に乗り、僕の体へと腕を回した。
僕達は自転車で、朝の街中を走った。
太陽が少しづつ、街の景色に色を塗り始めていた。
運河に掛かっている橋を渡っていると、船の上で歯を磨いていたおじさんがこっちを見て、
「ジャロちゃんおはよう!」と言って、手を振った。
「おはよう!」とジャロは大きな声で応えた。