少し離れたテーブルに座っている、コックの男の人が僕を呼んだのだ。
「そこのケチャップ取ってくんねーか!?」
男の頭の髪は薄く、丸くて大きな鼻は、なぜか赤かった。
「おい、何モタモタしてんだよ!あー、もういい、おれがそっちに移動する!」
そう言って、食器が乗ったお盆を持ってきて、僕の目の前の椅子に座った。
「おめーあれだろ。おれの隣のベッドでぐうすか寝てた小僧だろ?」
その男は、テーブルに置いてあったケチャップを手にとり、自分のパスタに大量にかけた。
パスタは、ほとんど真っ赤になった。
「おれはムンゴ。おめーは?」
僕は、左手首につけているブレスレットを見た。
「…ビアン」