「人間の回復力じゃない」とその医者は驚いた様子で言った。


…人間?




それから、ジャロは“オートラント”内を案内してくれた。


僕が3日間寝ていた部屋があるのは、“オートラント”の別館であり、料理長とジャロの家だった。

ジャロが言うには、何人かのコックに、空いてる部屋を貸しているらしい。


“オートラント”の前には、レンガが敷き詰められた広い通路を挟んで、運河が流れていた。

これがあるおかげで、船に乗って来店するお客も少なくないらしい。




調理場を見たあと、



「お父さんも言ってたけど…、もし良かったら、ここで働いてくれない?」とジャロは言った。



「…うん、構わないよ」と僕は言った。



心からそう思ったのだ。

じっとしているより、動いている方が、記憶に関する“何か”を得られる気がした。