「なんとなく」と僕は答えた。
「これがあなたの名前かしら?」
「さあ…」
「…じゃっ、決まり!記憶が戻るまで、あなたの名前はビアンね!」と言って、ジャロはとても嬉しそうな顔をした。
「…ビアン」
何か、とても心地が良い響きのする、名前であった。
「彼、記憶喪失らしいの。しかも、結構重症の」とジャロは父親に向かって言った。
「何、そうなのか?」とジャロの父親は驚いた。
しかし、すぐに優しそうな表情に戻り、
「まあ、今はゆっくりと休みなさい」と言った。
「ちょっと私は、これからムンゴさんと新メニューの研究をするから、失礼させてもらうよ」
そう言って、ジャロの父親は部屋から出て行った。