「お父さん」とジャロは言った。



「紹介するわね。この人は、私のお父さんで、このレストランの総料理長なの」



「よろしく」と彼は言った。



親子二人とも、何か人を落ち着かせる雰囲気を持っているなと僕は思った。



「ところで、君のスーツのポケットの中にこんなものが入っていたよ」



ジャロの父親は、手に持っていたものを、僕に手渡した。



…金色をした、ブレスレットだ。



何か字が彫られている。



「わあ、何て書いてあるのかしら。見たこともない字だわ」とジャロは言った。



僕はその字をじっと見た。



…読める。



「ビアン…。ビアンて書いてある」と僕は言った。



「えっ?これが読めるの?」とジャロは驚いた様子で訊いてきた。