そっと扉を閉めた後、勢いよく廊下を走る。

音楽が聞こえる方へと一目散に走り、途中ヒールを履くと、何食わぬ顔でエントランスに入り、歓談している参加者たちの合間をすり抜けて外へと出た。

どうやら私が王太子様と共にいたことは誰も気づいていないらしく、警備の騎士ですら私に視線も合わせず、外へ出る際も軽く会釈をしただけで、特にそれ以上の行動はなかった。

全速力で走ったことと様々な緊張とで、心臓が飛び出そうなくらい大きく脈が打ち鳴らしていたが、城の門まで辿り着いたとき、ようやく大きな安心感に包まれる。

しかし、まだ油断はできない。
この場を早々に離れて、ようやくひと息つけるというもの。

門の外には、屋敷から乗ってきた馬車が待機していた。

私はそれに急いで乗り込むと、御者に『疲れたので屋敷に戻るわ』と告げた。


馬車はゆっくりと動き出し、城が遠くなっていくにつれ、自身も落ち着きを取り戻し、冷静になっていく。

そのとき、初めて大きく息を吸い、吐くことができた。


真っ暗な外の景色を眺めながら、今までの出来事を改めて思い返す。




どうやって私、あの部屋に行ったのだろう。

本当に記憶がない。

楽しく王太子様とお話していたのは、微かに覚えているけれど。


なぜ、私はあの部屋に王太子様とふたりでベッドに寝ていたの?

しかも着ていたドレスは床に落ち、全裸で。


普通に寝てしまったって、全裸なんてするはずもない。

下着くらいはちゃんとつけて寝ている。