今の状況に頭がついていかない。
混乱しすぎて、そのままベッドから床に落ちてしまう。
「っぎゃっ!!」
とびきりの声を出してしまってから、ハッと気づいて焦る。
しまった!
王太子様が目を覚ましてしまう!!
けれどそんな声を上げても王太子様が覚めることはなかった。
落ちた状態のまま、少し安心して大きく息を吐いた。
良かった、とりあえず最悪の事態は避けられたわ。
けれど、なぜ私がこんな場所に?
どうして私裸なのかしら?
……ううん、まずその謎を考えるのは後ね。
それよりも服を着ないと。
そして王子の目が覚める前に、ここから退散しないと!
転んだ痛さなど感じる余韻もなく、スッと立ち上がると近くに落ちていたコルセットを手に取った。
こんなとき、自分でドレスを着れることが役に立つ。
手慣れた手つきでコルセットを閉め、床に無造作に広がっていたドレスを身につけ、乱れた髪を手早く纏める。
そして物音をなるべく立てないように手でヒールを持ち、静かに部屋の扉を開けた。
顔だけを廊下に出し、外をキョロキョロと確認する。
幸い広い廊下には誰もいない。
さらに運がいいのか、遠くの方でまだ音楽が微かに聞こえていた。
どうやら宴はまだ終わっていないらしい。
これならば逃げ帰ることも容易いだろう。