「父上はかなり有名な外科医なんだ。…俺もきっと、跡を継げと言われるだろう」



フェンスにもたれかかりながら御影が言う。



「先輩は、跡を継ぎたくないんですか?」



澪和も御影の横で、フェンスにもたれかかった。

御影は少し考えていたが、



「いや…。どうも俺と父上とは気が合わんのだ」



少し苦笑した。



「なんと言っても、姉上も俺も元々は普通の家庭の出だ。それが一変してこのような上流階級の人間に貰われるとなると…」



はぁ、と小さくため息をつき、



「やはり、心の中では父上も母上も受け入れられてはいないんだ」



ボソリと呟いた。