数週間程の時が過ぎた。少しずつ安定しており、激戦は終盤となった。有能な戦力である神那はだんだんと戦場への出陣は少なくなってきた。要約すると、休みを貰えたのだ。本当はこの時間も無駄にせず、神那を一族の為に使いたい長だが、壊れては意味がない。たった二日程だけの休暇。神那はその休暇を修業に費やそうとしていた。『鬼才』と他一族からも言われる神那は、天武の才だけでなく、傲らぬ努力があるからこそなのだ。確かにIQ300以上となると鬼才だが、それでもIQで運動神経がどうなるわけでもないだろう。
 空区…戦場となり得ない、商業の地。如何なる事があろうとも、争いは許されない。例え、敵がいたとしても。
 空区の一画には清流が流れている。底が見える程清らかだ。今日はそこで修業しようと思いながら歩を進める。しかし、其処には二人の気配があった。まぁ、空区のここでは敵でも戦えないのだが。
 気配を忍ばせゆっくりと近づいていく。  
「誰だ!」
流石同業者、気付いたか。そう称賛を送りながら姿を現す。
「お前……名は?」
いきなり問うてくるかと低く笑いながら返す。
「…神那だ」
名を名乗ると赤髪の男が嬉しそうに笑った。
「神那!俺はノゾミ、よろしくな!」
「おい、初対面に名乗るな!」
ノゾミ、と名乗った赤髪は濃い藍色が混ざった黒のような髪色に注意されていた。
「こっちは黒鉄(くろがね)」
「おい!」
自らの名前をばらされ、怒る黒鉄。なんだか三流のコントを見ているようで、ふっと笑ってしまった。前を見ると笑顔で見てくるノゾミと、横を見ている黒鉄。
 「…よろしくな」
そう呟くとノゾミは笑い、黒鉄はフンッと鼻で笑った。
 其処には、友情が芽生えていた。

─────筈だった。