「直樹ぃ、ぎゅっ!」
 
手当が終わると、梓が甘えた声で言う。

待ってましたとばかりに、俺は彼女を抱っこした。
そして耳元で好きだと言う。梓も俺の耳元で好きだと言った。

それから、好きの応酬。キスの応酬、ハグの応酬。

それはそれは甘くて暖かかった。
 


「ねぇ、直樹。明日日曜日だし、一緒にマグカップ買いに行かない?」 
 
「ああ、そうだな。次は割らないようにしないとな」
 
「もう、笑い話じゃないんだけど」
 
「ごめんごめん」
 
「直樹に怒られると思ってほんと焦ったんだから」
 
「梓のびびってる感じも可愛かったよ」
 
「それ言ったら直樹の焦ってる感じも可愛かったけど?」
 
「そりゃ、ずっと大事にしていきたい、ずっと愛していきたい、って思ってる人に傷でもついちゃったらなんて考えたらそうもなりますよ」
 
「……ばか」
 

どんな話をしたって甘くしてしまう。
それは梓が可愛すぎるからであって、俺のせいではない。

こんな甘々な生活が楽しくないわけがなかった。ずっとずっと梓とこうしていたいと思った。
 


その後、俺たちは抱き合ったまま眠りについて、翌日のお昼ぐらいに目を覚ました。

甘い甘い一晩は終わった。
そして、ちょっと甘めの日曜日が始まる。




fin.