もう忘れたと言い聞かせていたのに。



こんなに時間が経っても考えれば考えるほど拡の一つ一つの表情や声や温もりを今もまだ鮮明に思いだせる。



いつも隣で楽しそうに歌い、あたしが好きになる曲をいつのまにか覚えて歌ってくれた拡。



懐かしい曲を一緒に歌ったり、お互いを重ね合わせた曲をデュエットしたけど照れ臭くて笑っちゃったこともあった。



涙が出てしまいそうになるほどの綺麗な歌声を、いつも近くで一番に感じていたのは、間違いなくあたしだった。



拡の特別は、拡の目は、いつもあたしに向けられていた。



どこか、こんな日がずっと続くのかなって思っていたし、夢を諦めてと最低な事を思ったりした自分もいた。



でも思った通りにはいかなくて結局この日を迎える事になってしまった。