春雨のような雨が傘や地面を濡らしていき、少しずつアスファルトのへこみに水溜まりを作っていく。



きっと空だけはあたしを思い、一緒に泣いてくれているのだろう。



傘を握りしめるこの手には、最後に握りしめたあの人の微かな温もりが今も残っている。



輝かしい日にこんな憂鬱な気持ちでこの場にいるのは、きっとあたしくらいだろう。




しばらくそんな事を考え、室内へと入っていく。




しかし会場の中へ一歩入ると一気に感情が押し寄せ目頭が熱くなる。



周りにはハンカチ片手に感動して涙する人。

喉を潰す勢いで大声をだす人。

ペンライトを何本も持ち手を振る人。

数えきれない人の数。



知りたくなくて避けていたぶん想像を遥かに超える"加賀拡"の凄さがそこにはあった。