「やぁ、チョコくん!昨日ぶりだね!」
「……チッ」
彼は盛大な舌打ちをすると、声をかける私を無視して廊下を進んでいく。
「チョコくーん?」
私が懲りずに彼のあとをついて行くと、彼はあの空き教室に入って行った。
「…お前、なんなの」
「えっ?」
ドアを閉めるとやっと口を開いてくれた彼に、私はナルちゃんから聞いた情報を話していく。
「猪口辰巳(イノグチタツミ)くん、2-A組。文武両道のイケメンで、去年女子から沢山のチョコを貰っているモテ男くん」
「…なんで俺の名前知ってるわけ」
「友達から聞いたの!
私は小枝梓、2-B組。チョコが大好きなの。よろしくねっ!」
「お前とよろしくする気はない」
「あ、ちょっと待って待って!チョコくん!」
教室を出て行こうとする彼を慌てて止めれば、彼はジロリと冷ややかな目を向けてくる。
「そのチョコくんての、なんなの」
「チョコって漢字で猪口って書くでしょ?だから君はチョコくん!」
「最悪……で、俺になんの用?」
「あ、そうそう!えっとね、私にチョコを作って欲しいんだ!」
「…………は?」