「チョコを買ってくれたお客様に、永遠に記憶に残るチョコの味を作れたらいいと思ってつけたんだ」
「永遠に記憶に残る……」
『この世にこんな美味しいチョコがあったんだ!って……なんで今まで知らなかったのか後悔しちゃうくらい、記憶に残る味だったの』
「父さんはすごいな」
「え?」
あいつのあの時の顔は、本当に嬉しそうな笑顔だった。
父さんの思いは、あいつにちゃんと届いていた。
「……俺の知り合いに、父さんのチョコが大好きなやつがいるんだ。元気すぎるアホなやつだけど、父さんのチョコを記憶に残る味だって言ってた」
「そうか……それは嬉しいな」
父さんみたいになりたいな。
父さんみたいに、誰かを喜ばせられるチョコが作りたい。
誰かの……あいつの、笑顔が見たい。
「辰巳は、その子のことが好きなんだな」
「はっ!?」
「もしかしてチョコを作りたいって言ったのもその子のためか?」
「いや、あれは脅されたからで……」
……でも今は、脅されたとかじゃない。
あいつに喜んで欲しいと、確かに思っている。
「父さん、もう1回作っていいかな?」
「あぁ、もちろん」
「────よし」
俺はもう一度、気を引き締めなおして作業に取り掛かった。