「あの日、友達だった奴らにかっこ悪いって言われて……それが嫌で、父さんにあんなことを言った」
「……うん」
「でも俺は、俺は……」
『なんだかんだ言っててもやっぱりチョコくんは、お父さんも、お父さんの作るチョコも、大好きなんだよ』
「────俺は、父さんも、父さんの作るチョコも……大好きだから」
「辰巳……」
「っ、あー!恥ずかしい!なんだこれ!」
変になった空気に耐えられなくて、俺は頭を抑える。
「ははっ……ありがとうな、辰巳」
「……うん」
そこにもう、苦しそうな笑顔を見せる父さんはいなかった。
「でも、なんで急に言ってくれたんだ?」
「それは……」
『あははっ、顔が真っ赤だ』
「っ、」
「辰巳?」
「……別に、なんでもないよ」
ああ、最悪だ。
思い出しただけなのに、 また同じセリフを向けてくるあいつが容易に想像できる。
「本当に、最悪だ」
言葉とは裏腹に笑顔が零れていたことを、この時の俺は気づいていなかった。