「辰巳が中学生の時までは、毎日のようにこうやってチョコ作りを教えてたよなぁ。ある日を境になくなってしまったけど、また初めてくれて嬉しいよ」


「……っ」


昔を懐かしむように、けれど少し苦しそうに微笑んだ父さんに、俺はまたあいつの言葉を思い出していた。


『……それに、人を笑顔にできるお父さんの仕事をかっこ悪いだなんて思って、勝手に遠ざけてるチョコくんの方が数百倍かっこ悪いに決まってる』


『だってチョコくん。チョコなんか嫌いだって言いながら、お父さんにチョコ作りを教えてもらい始めてから楽しそうな顔になってるよ』


「………………」


ずっと言いたかった。けれど、言えないでいた。
だけどあいつに気づかされた。


「────父さん」


「ん?」


「あの時はごめん……っ」


「え……?」


ポカンと口を開ける父さんに、俺は頭を下げた。


「あの日、父さんと……父さんの作るチョコを……嫌いだ、って言ったこと……本当に、後悔してる」


「あ、あぁ……そのことか」


納得したように頷く父さんに、俺はそのまま言葉を綴っていく。