『……それに、人を笑顔にできるお父さんの仕事をかっこ悪いだなんて思って、勝手に遠ざけてるチョコくんの方が数百倍かっこ悪いに決まってる』
『だってチョコくん。チョコなんか嫌いだって言いながら、お父さんにチョコ作りを教えてもらい始めてから楽しそうな顔になってるよ』
「はぁぁぁ…………」
「辰巳?でっかいため息ついて、どうしたんだ?」
「あ、ごめん。なんでもない」
あいつから言われた言葉を思い出して、父さんの前で俺は思わず息を吐いた。
「何かわからないところがあったか?」
「いやっ、チョコは大丈夫。うん」
目の前で自分の作ったチョコを眺める父さんに、俺は慌てて返す。
「そうだなー、見た目はあともう少しだな。味は……まぁ及第点か」
「はは、厳しいな……」
中学生まで教わっていたとはいえ、元々完璧ではないのに加えてブランクは大きい。
父さんを納得させるには、まだまだ練習が必要だ。