「……?私はないけどなぁ…」


「じゃあ、梓にはこれから訪れるのかもね」


「そっかぁ……」


「価値観や意見が異なっていても、それをお互いに尊重できる人に出会えれば、それは一生の宝物になるんだろうね」


そう言って微笑んだお姉ちゃんの横顔は嬉しそうで、なんだか少し羨ましく思えた。


そっか……お姉ちゃんは直樹さんに出会ったんだ。
お互いに尊重しあえる存在を見つけたんだ。


「いいなー!私もそんな人と出会いたいなぁ」


「ふふっ……梓が気づいてないだけで、実はもう出会ってるかもしれないよ?」


「えぇ?…そうかなぁ?」


「そうだよ。お互いに尊重できる、そんな存在の中で1番大切な人がわかったら……それは『運命の人』って言うのかもね」


「運命の人……」


絵本でよくあるお姫様のストーリー。
最初は不幸な女の子も、ラストには王子様と結ばれてとても可愛いお姫様になる。


私も小さい頃は、いつか素敵な王子様に出会うことを夢見てたっけ……。


「えへへっ!そうだねー。
私もいつか、お姉ちゃんが直樹さんっていう運命の人に出会ったみたいになれるといいな」


「なっ…!?なんでそこで私と直樹くんが出てくるのっ!!」


ゆでダコのように顔を真っ赤にして訴えてくるお姉ちゃんは、まるで絵本のお姫様のように可愛くて。


「あははっ!」


私はそれを、とても羨ましく思った。