「え?」


「私ね、今気になってる人がいるんだけど」


「えっ、梓、好きな人ができたの?」


「あ、違う違う!そーゆーのじゃなくて、普通に仲良くなりたいなーとかの気になってるだから!」


「あ、そうなの…」


「そうそう。それで、その人が友達なんてめんどくさいって今日言ってて……私が友達の良さを伝えたら、そんなやつは俺の周りにいなかった…って」


「そう……もしかしたらその子は前に何か、友人関係で嫌な思いをしたんじゃないのかな?」


「嫌な思い…?」


友人関係での嫌な思い……。


チョコを頬張りながら考えてみるけれど、いい友達しか周りにいなかった私には中々思いつくことができそうもない。


カフワの豆で挽いたコーヒーをカップに注いで隣に座ったお姉ちゃんは、湯気を吹きながらゆっくりと口を開いた。


「人はみんなそれぞれ違うから、価値観や意見が合わないことは生きている中で必ずあると思うよ」