「やぁやぁ、チョコくん!調子はどーぉ?」


「……またお前か」


お昼を食べたあとの休息の時間。


私は最近よく、お隣のクラスに足を運んでいた。


「今日も帰ったらチョコ作りに励むんだよね?」


「…そういうことを学校で言うな。誰が聞いてるかわかんないだろ」


「小声だし誰もこっち見てないから大丈夫!」


「いや、見てるから」


「え?」


辺りを見回してみると、何故か目が合った人たちが瞬時に視線を背けていく。


「…なんで?」


「俺が普段誰とも関わんないから珍しいんだろ」


「誰とも?男友達とかいないの?」


「……友達なんて、めんどくさいだけだ」


「?」


理解のできないことを言う彼に疑問を浮かべながら思い出すと、確かに彼が誰かといる姿を私は見たことがなかった。


「…友達ってね、凄いんだよ。

悩んでることがあると何も言わなくても気づいて声をかけてくれるし、嬉しいことがあったら一緒に喜んでくれる。

いつも同じ時を過ごすだけで、なんかおっきなパワーをくれるんだよ」


ナルちゃんのことを考えて自然と笑顔になれば、彼は何かを思うように口を開いた。


「…そんなやつ、俺の周りにはいなかった」


「え?」


「なんでもない。授業始まるから、さっさと戻れ」


「あ、ほんとだ。…じゃあ、また来るから!」


「は?来なくていい…」


「また明日ねー!」


『…そんなやつ、俺の周りにはいなかった』


ぼそっと呟かれた彼の言葉の意味を考えながら、私は教室を出て行った。