ホームには、列車の通過を知らせるアナウンスが鳴り響く。
私はしりもちをついた体制からのろのろと起き上がった。
そして、前へ、前へ、一歩づつ踏みしめる。
さきと、私が二度と立てないこの世界に、別れを告げるように。
列車はどんどん加速してこちらへ向かってくる。
私は一思いにその線路の中に飛び込んだ。
周りの人たちはみんな唖然茫然地獄絵図のように叫びまわったりしていた。
・・・でももう、興味はないや。
轟音をあげて向かってくる列車、軋む体。初めて感じる痛さ。これをさきも味わって、ここに来たんだ。
怒っているのか、泣いているのかわからないさきが私を迎えに来る。
悲しい声で私の名前を呼んで、両手を広げてくれた。
どんな形でもいい。もう一度さきに会って、もう二度と離れないなら。
だから、さき・・・
「もう離れないで。」
―――もう離れないで、完